2014年12月14日

Final Decision 〜ハイスクール編1−01〜

ズダダダダダダ…。
…ギュワァァ…ン。
……。
…きゃあきゃあ…。
吉岡センパーイッ。キャー。
……。
…文化祭恒例。
生徒会役員による名物バンド…。
「……」
…なんてものに。
なんで僕が参加しているのかというと。
……。
そりゃ…役員なんだからなんだけどさ…。でも。
役員になったこと自体。
阿久津(同級)の陰謀だったんだ。
……。

あれは10月。
後期の役員選出の期日が迫っているというのに。
立候補者の欠員があって。
推薦委員会の連中が。
めぼしい連中を毎日のように追いかけまわしていた。
…何のためかって?
そりゃ。立候補させるためだよ。
立候補者がいなければ選挙ができず。
選挙ができなければ。役員は決まらず。
役員が決まらなければ。
生徒による学園運営が出来なくなる…。
……。
そんなことは僕にとってあまり興味のなかったことなんだけど。
…しかし。
推薦委員会の連中と。
教師はグルであった…。
推薦委員会の連中が。
どうやってめぼしい人物を見つけるかというと。
教師から、生徒の中学での経歴を。
横流ししてもらうのだ。
……。
僕は中学3年のとき。
生徒会の副会長で卒業式のときに答辞を読んだ…という。
とんでもない(?)経歴を持っていた。
だが。これは。
特に僕が立派な人間だったからではなく──
副会長になったのだって。
担任教師に、役員をやっていると内申書での評価が上がるから。
と。唆されたからだし。
答辞を読んだのも、単に。
学校で「男の副会長が答辞を読む」というように。
決まっていたからだ…。
……。
内申書が影響したのかどうかはわからないが。
僕はめでたく、志望校のS高校に入学できた。
…わけなのだが。しかし。
理由はどうであれ。
「副会長で答辞を読んだ」という経歴は。
立派(?)なものと判断され。
僕は毎日。
推薦委員会の連中に追いまくられる羽目になったのである…。
……。
根負け(立候補)なんかするもんか。
と。思っていたのだが…。
…そこに。
阿久津の陰謀があったのだ。
「……」
僕はステージ最後部の阿久津を見た。
ズッダンズッダン…。
阿久津のバスドラ。
ッダンズズダン…。
僕はこのバスドラに乗せられたのであった…。
(今も乗せられているんだが)。
……。
あの日。阿久津がセッションをしようと言い出した。
何度かやっていたし。特別な意味などないと思って。
軽い気持ちで始めたんだ。
…。
阿久津のバスドラは心地いい。
安心して手の内を広げられるし。
好きに遊べる。
それがピアノでもギターでもベースでも。
それまで楽器をソロでしか弾いたことのない僕にとって。
阿久津とのセッションはかなり刺激的だった。
……。
1時間ほど気持ちよく汗をかいた後。
阿久津が僕に言った。
「高崎ちゅわん。嬉しいぜ。ノってくれてよ」
「いつものことだろ」
「そうか。そうだよな。いつものことだよな」
「?」
「ほら。先輩たちも。かんどーして見てるぜ?」
「……」
僕は振り向いた。
…げっ…。
そこには。
推薦委員会の連中を始め、
現役の役員がずらりと並んでいたのだ。
「謀ったな。阿久津!」
「まあまあ…。ノってくれたんでっしょ」
「ノってねぇよ。馬鹿言うな」
「無理無理。もう、逃げれねって。あの音聞いて。皆さん方がおまえを解放してくれると思う?」
「う…」
……。
うちの高校の役員になるための条件は。
少し変わっていて。
お勉強が出来る以外に。
音楽の才がないとダメなのだ。
毎年文化祭の最終日に。
役員によるバンド演奏が行われるのだが。
役員はそこで。
喝采を浴びられるほどの音的技量がなければならない。
…それはもう風習で。
事の起こりを知ってる人間はもういないようなのだが…。
しかしこれは逆に言うと。
音才のある人間は。
役員にならなければならない。
…ということになるのだ…(普通科だもんで。そうそう音才に長けたヤツがいるわけではない)。
……。
そのセッションの後。
僕が皆さんに"大歓迎"されたことは言うまでもない。
出入り口を固められ。
壁に追い詰められ。
女先輩方に迫られ…(これが一番辛かった…)。
そして。
肉体的(?)にも精神的にも逃げ場を失った僕は。
ついに首を縦に振ったのであった…。
……。
ズダダダダン。
…ワァ〜。きゃ〜。
…全6曲をやり終え。
音が終わった…。
歓声と拍手。
まあ実際。
ライブは気分いいけどな…。
「……」
ステージ中央では。
ボーカルの吉岡先輩が。
花束を貰っていた。
…あの人。吉岡先輩の彼女だな〜。
あ…。
先輩の晴れ姿(?)をぼえっと見えている僕の視界に。
月葉先輩の姿が映った。
「……」
「…」
月葉先輩が吉岡先輩に耳打ちしている。
……。
吉岡先輩が僕を振り向いて。
手招きした。
「……」
え〜と…。やっぱり僕に用事…?
僕は楽器をおいて。
中央に歩いていった。
「高崎君」
「……」
月葉先輩が僕に花束を差し出した。
…まじ?
……。
こんな公衆の面前で?
花束を貰う…?
うそ〜。
…と僕が固まっていると。
吉岡先輩が僕を小突いて言った。
「ほら。高崎。先輩に恥かかせるなよ?」
「……」
貰ったら大変なこと(?)になりそうだけど。
貰わなくても大変なことになりそう…?
僕は手を伸ばして。
花束を受け取とろうとした。
すると。
「え…」
月葉先輩が僕の腕を掴んで。
引っ張った。
僕は体制を崩して。
そのままステージの下に落っこちた。
…辛うじて、すっ転ぶような無様な姿にはならなかったが…。
何考えてんだよ〜。
「……」
僕が少々非難がましく月葉先輩を見ると。
月葉先輩は…。
「……」
僕の首に両腕を回して。
キスをしてきたのであった…。
……。
…きゃぁぁぁぁ〜…ッ。
会場からお囃子の声が上がった…。
「……」
「じゃ後でね」
といって。月葉先輩は。
くるりときびすを返し。
会場の闇に消えていった…。
……。
…で?
このあと僕はどうすれば良いわけ…?
情けないことに。
僕の身体は。
かっちんこと固まってしまっていた。
すると。
「高崎。ぼえっとしてんなよ。退場するぜ?」
天から。
声が聞こえた。
僕を呪縛(?)から解放したのは、阿久津であった。
……。
僕はステージに上がり。
楽器を担いでそそくさとステージ脇に退場した…。
……。
「……」
「高崎。月葉先輩と付き合ってたのか」
なおもぼえっとしている僕に。
阿久津が聞いてきた。
「…付き合ってねぇよ」
…まだ…。
そう。実は。昨日の放課後。月葉先輩に呼び出され。
告白というものをされてしまったのである…。
……。
「…話って何ですか」
「うん…。高崎君。付き合ってる子いる?」
「え…」
「恋人いるの?」
「…。いません…けど…」
「じゃ。好きな子は?」
「…いません」
「そう…。じゃあ、私と付き合って」
「……」
「…」
「…ええ?」
「そんなにびっくりしないで。前から高崎君のこと。いいなって思ってたのよね」
「……」
「明日のライブがんばってね。応援してるわ」
「……」
「私もう3年で卒業だし。思いで作りたいの。ね?」
「……」
…え〜と…。
「明日返事聞かせてね。じゃばいばい」
「……」
……。
…と。いうようなやり取りがあったのだ。
……。
で?
…今日。花束を貰って。
キス…されたってことは…。
え〜と。
付き合うってことか…?
う〜ん…。
「高崎〜。キスまでされてぼえっとしてたい気持ちわかるけどよ。片そうぜ?俺たち平(1年)なんだしよ」
阿久津が僕を小突いて言った。
「あ…ああ…」
僕は曖昧な返事をして。
片づけを始めた。
……。
機材搬出をしていると。
月葉先輩が現れた。
「高崎君」
「…あ…え〜と…」
「ファイヤーストーム始まっちゃうよ。踊ろうよ」
「…まだ片付け終わってないんですけど…」
「えー…。ねぇ。吉岡君」
月葉先輩が。
吉岡先輩に声をかけた。
「は?」
「借りてっていいでしょ?高崎君」
「あ。どうぞ?もう終わりますし。貸すといわず、やりますよ。そいつ」
「ホント?」
「ええ。その代わり。物理のレポート見せてくれませんか。オレ単位危なくて…」
「いいわよ。そう。じゃ借りていくわね。…じゃなかった。貰っていくわね」
「はは。どーぞ。…高崎。しっかりな。オレのために働けよ?」
「……」
…吉岡先輩…。
僕を売るんですね…。
「さあ。高崎君。行きましょ?」
「……」
……。
僕は月葉先輩に腕を引かれ。
ファイヤーストームの輪に入った。
「……」
月葉先輩がぴったりと僕に身体を押し付けてくる。
…え〜と…。
困るんですけど…。
僕はさりげなく腰を引いた。
しかし。
月葉先輩はそれを許してくれなかった。
「高崎君。感じてるの?」
「……」
…勘弁して…。
「高崎君て可愛い。キスも初めてだった?」
「……」
「ねぇ。3年じゃダメ?」
「…」
…3年じゃダメとかそういう問題では…。
「キスして」
月葉先輩が。軽く目を閉じて。
少し顎を上げた。
僕の唇の下に。
月葉先輩の唇が…。
……。
…キスしたら…。
付き合うってことかな…。
え〜と…。
…と。
僕の前頭葉はしきりに考えたがるのだが。
辺縁系がもうすっかりその気になってしまっている…らしい…。
…いいか…。
「……」
僕は月葉先輩の唇に。
自分の唇を押し付けた。
…蜂蜜の味がした。
posted by ひめこ at 17:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説
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